2013年4月1日月曜日

努力は報われる?・・・

昨今、日本のマスコミを賑わせている『ジャリタレ』というアイドル達。
今日は『成熟したものよりまだ未熟なものをもてはやす』日本特有の文化について一考してみようと思います。

名づけて『私家版 芸能界と俳優論』

上記の題名『芸能界と俳優論』と今日のテーマ『ジャリタレ(アイドル)』は
大分遠い印象にうつるかと思いますが、
まぁ、ちょっと読んでみてください・・・

   1980年1月 ニューヨーク市
   1月ある日のタクシー運転手との会話

運『お前、ジャパニーズか?』

私『そうだけど・・・』

運『俺、昨日、日本人の友達の家行ってCATVで日本の番組観たぜ!』

私『へぇ・・・どんなの?』

運『子供達の歌合戦観たぜ!すげえな、日本、子供だけであんなに盛り上がってんのな!』

私『へぇ・・・』

運『知らねぇの?すげぇ伝統ある番組だって言ってたぜ!』

私『素人が出てきて合格するとキンコンカンコンキンコンカンコンキンコンか~ンって鳴るヤツ?』

運『えぇ!?違うよ!何かよぉ、ゴージャスだったぜ。すげぇ大勢の日本人ダンサーの中で子供が
  歌うんだよ。大体、皆、そうだったぜ!!』

   私、心の中で考える(『・・・ゴージャス・・・?大勢のダンサー・・・
                 その中でたった一人の子供が歌う歌合戦?観た事ないな』)

運『観たことないな・・俺がこっち来てから始まったのかもね』

運『えっ、何か日本人なら誰でも観てるって俺の友達言ってたぜ?』

私『・・・???』

運『あれだぜ、12月31日に毎年やってるロングラン番組だって言ってたぜ!?』

   私、心の中の声(『・・・大晦日・・・毎年やってる長寿番組・・・歌合戦・・・
              NHK紅白歌合戦じゃん!!!』)

私『あ~あ~あれね!!』

運『分かったか?そうだろ?あれ、年末に皆で観るんだろ!?』

私『あ~あ~・・観るね、確かに』

運『俺さ、日本、すげぇ国だと思ったよ。』

私『・・・何が?』

運『だってよぉ、子供の歌手志望達の歌合戦にさ、日本中が盛り上がるんだぜ。
  子供の夢を皆が支えるってすごいよな!俺、いい国だなぁって思ったんだよ!!
  何かさ、そう思ったら、下手な子供達でも応援したくなるよな!!
  そうやって、信じる気持ちが子供を育てるんだよな!!』
              

   その当時の私には、とてもそれがNHKがやっている
  〝国民的番組″の紅白歌合戦なんて言えなかった。
   あまりの驚きに口ごもっていると

運『俺はそこまで子供見続けられないからさ、全部は観なかったけど、
  最後に出てきた女の歌手だけは大人でうまかったな!あれが子供達の憧れてる
  ジャパニーズアイドルか?』

私『ああっ、そう・・・・(きっと美空ひばりだ)』

   てな事があった2年後。
   1982年8月。東京。
   数年ぶりの帰郷。久しぶりに日本のTVを観ると素人の若い男の子が音程どっぱずしの
   舌足らずな歌を気持ちよさそうに歌っている姿。

私『この素人の子、誰?』

母『あんた、その子素人じゃないよ。トシちゃんって言って、今一番人気あるアイドルだよ』

私『・・・ああっ、そうか!!』

   数年前にNYでタクシーの運転手に対して感じた2つの異和感がここで解決しました。
   異和感が何だったかと言うと

1、なぜ紅白歌合戦が〝子供達の歌合戦″に見えたか?
2、なぜ、美空ひばりがアイドルに見えたか?

   解明していきましょう。


ニューヨークは本当に安いお金で、一流アーティストのプレイが聞ける街です。
私もそんなに音楽に造詣が深い訳ではありませんが、あの街に数年住んで、
テレビを見たり、ラジオを聴いたり、たまにバーに行ったりしてライブ演奏を聴いたりしていたら、
知らず知らずに耳が肥えてしまいます。
圧倒的なクオリティの音楽しかそこには存在しないからです。
というか、街を歩いているだけでも度肝を抜かれるストリートパフォーマー達の音楽で
目も耳も現代POP、JAZZ、BlackMusic、だけに関わらず様々な音楽に対しては肥えてしまうものなんです。これは行って、その街の空気に触れたら1週間でもすぐに感じる事でしょう。

帰国した後に日本人アイドルの歌を聴いて、即座に『この素人は誰?』と
無意識に問うた私の行動が全てをあらわしています。

私の家系は、『男がピアノぉ!?男は走ってりゃいいんだっ!(「ジョー樋口の子育て より」)』
こんな感じで音楽なんて無縁の育ちだったのにも関わらず、ふと聴こえてきた歌唱レベルに対し、
『アイドルかな?』ではなく、『素人だな』と判断したのです。

1、なぜ紅白歌合戦が〝子供達の歌合戦″に見えたか?
解答です。

   そもそも東洋人は顔の作りが平坦で西洋的には童顔と捉えられる顔立ち。
   西洋人と比較すると、身長、体系共に幼児体型のパーセンテージが高い。
   極めつけは 音程感覚・リズム感・演奏と共にセッションするという感覚など皆無の歌唱技術

これらの要素により、アメリカ人運転手には割合として子供達の歌合戦にみえたのでしょう。
(勿論、成熟した大人の歌手も大勢いますが、あくまでも割合の問題でそう映ったのでしょう)

続けて、2番目の問題・・・
2、なぜ、美空ひばりがアイドルに見えたか?

これは簡単。単純に言えば定義の違いです。

   英語のアイドル(idol)は『崇拝の対象』という意味。
   一人の歌手をアイドルと称する事には、『崇拝するレベルを持った才能あるアーティスト』
   という意味合いが含まれる。
   で、例えばどんな歌手が英語圏でアイドルと呼ばれるかと言うと、
   Elvis Aron Presley(エルビス・プレスリー)や、The Beatles(ビートルズ)です。
   

当時、プレスリーやビートルズは神状態。
政治思想、市民運動、平和運動、様々な人々の行動に影響を与えたジョンレノンが
神的存在として崇められidolとして崇拝されていました。

   一方、日本のアイドルは同じ『崇拝の対象』と言っても『崇拝』の定義が違う。
   一人の歌手をアイドルと称する事には、『崇拝するべく明るさと快活さと可愛らしさを
   継続する努力をし続けられる才能のあるタレント』という意味合いが含まれる。
   で、例えばどんな歌手(タレント)が日本語圏でアイドルと呼ばれるかと言うと、
   ・・・これは日本在住の方なら少なからず想像がつくだろうからもういいいでしょう。

まぁ、それでも1980年代中頃までは(崇拝するべく技術は無いにしても)手は届かない庶民の憧れではあった。

しかし、技術を伴わないアイドル達では限界がある。そこをどう脱却するか?
技術じゃないなら、『憧れ』という従来のアイドル像を覆してクラスメイト的親近感を全面に打ち出そう!的な感覚で『おニャン子クラブ』が出没。大成功。

続けてバラドル、グラドル、さらには女子アナ、声優、女優等、本来技術職と思われる俳優業にまでも、『女優業をメインとしたアイドル』が参入してきた。
(まぁ、当然と言えば当然なんです。そもそも歌手という特殊技術のアート世界から
 日本のアイドルが変貌したのですから。)

そして商業戦略は更なる技術のない若手を求めるアイドル時代へと突入。

15歳以下のチャイドル、1億総アーティストの日本文化の細分化に合わせ、
落ドル、鉄ドル、釣りドル、株ドル・・・最近では政治家オタクのアイドルなんてのまで出始めました。

こんな風に時代を経て、今はもう下手、未熟が武器になる時代。

今日、街であるポスターを見かけました。
ポスターにはマドンナ風の女の子。『高橋みなみ』と書いてある。

『・・・この子ってAKBの中でも一番オバちゃん風で、相当キツイよなぁ・・・』

と思ってた子。でもきっとAKBのファンの人も同じ様に思っていたのでしょう。
サブタイトルが

『やっぱり、努力は報われる』だって

私、バイク運転してから、爆笑しコケそうになりました。
技術なき者をアイドルでいさせる、
技術なき者をアイドルとして崇拝させる方法がここで明確になりました。

という訳で、
2、なぜ、美空ひばりがアイドルに見えたか?
解答。

技術のないアーティスト=英語圏のアイドルには成りえない。
ならば、アイドルの概念を変えて、
『技術がなくても努力で売れて金持ちにはなれる!!』
にすれば良いとなったのです。
そして、拝金主義よりスローライフ時代に入り、
『技術も容姿がなくても、努力し続ければ、俺は君を神と崇めよう!(その努力を)』
という、実力メイン(技術ではなく、売れる為の)のある種ハングリー精神を求める世界に
なった日本。

この日本の概念と英語圏のアイドルは違う意味。
『崇拝に値する技術を持ったアーティストへの敬称』。

アメリカ人タクシー運転手は、美空ひばりの歌唱と観客の反応を見て、
『彼女はジャパニーズアイドルだ』と判断したのです。

はい。今日も長くなりました。
そろそろ締めましょう。

芸のある人は芸を観せるもので、その努力は売りにしないで、陰でこっそり命懸けでやるものです。

   
   役者は演技を観せるのが仕事、そのプロセスを観せるのが仕事じゃない
   画家は完成した作品を観せるのが仕事、絵筆を持つ姿を観せるのが仕事じゃない
   音楽家はイイ曲を人に届けるのが仕事、楽器の前で苦悩してるのを観せるのが仕事じゃない

一人のアーティストが完成するまでには時間がかかります。でも、今の日本の

『未熟でもイイじゃん、楽しめれば』

という風潮では、育った頃にはもう用済みで、他の未熟な人に興味にの対象が移って、それまでの人達はお払い箱です、お金にならないから・・・

結局、努力は報われないんです。

こんな事やってると質の高いクリエイションなんて夢のまた夢です。

AKBのプロデューサーの秋元氏が雑誌のインタビューで、
どの様にAKBを発想したのかと問われて

『ニューヨークのブロードウェイでは、舞台がはねた後、ミュージカルに出演していたダンサー達が
 まだ興奮冷めやらない観客と共に、一緒に地下鉄に乗って帰る。僕はそれを見た時、日本でも
 こんなのがあってイイなと思って、アキバでAKB始めました』

とおっしゃっていたのですが、私もニューヨーク時代『DACIN'G』というボブ・ホッシーの素晴らしいミュージカルを観た後に、地下鉄で出演していたアン・ラインキングと一緒になったのですが、その時
の感覚はAKBのムーブメントとは全然違うものだった様に記憶します。

いわゆるアキバ的ムーブメント的な感じではなく、地下鉄に同乗する出演者達の横顔とその長く鍛抜かれた手足や、洗礼された身のこなしを観ながら、彼女達の芸に対しての畏敬の念といいますか、感謝の気持ちと言いますかそんなものを感じていた様に記憶してます。

はい。『私家版 芸能界と俳優論』まとめです。

芸能界とは、idol musicianを商業戦略のもとにアイドル歌手という新種のcreatureに作り上げた。
そして、多岐に渡ったアイドル戦略は、俳優業にも参入してきた。
現在、芸能界で俳優をやろうと思うと、それは日本的アイドルの努力を必要とする。
それには、AKBの彼女らの努力が最高の見本となるであろう。

映画界に関しては、TV業界の影響に抵抗し頑張っている監督、製作者がまだたくさんいます。
勿論、TV業界にもいるのですが。
そう言った方達の努力同様、私も使い捨てになる若手俳優が少しでも減るよう、
指導という形でアイドル回復の一助になれたらと思います。

以上です。

まぁ、コレも私の趣味といえば趣味なんで、皆さんの好みに対してとやかく言ってるわけではありませんので、ご了承ください。

1 件のコメント:

  1. Higuchi Wordsとかけてコカコーラと説く
    そのこころは・・・・

    読んでる(飲んでる)最中はチリチリとした刺激があるのに
    後味はスカッとさわやか、爽快そのもの!
    で、癖になる・・・
    ついまた冷蔵庫あけてしまう

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