最近、私は細君の勧めで、哲学者にして武道家(もうこの響きだけで私には尊敬に値します)内田樹先生の本を愛読しています。
細君が私に
『あなたはこの人と同じ考え方をしてるから、是非読んでみたら』と勧めてくれただけあって、
ページをめくる度に
『ああっ、そう俺こういう事考えてたの』とか
『そうそう、コレコレ、これが言いたかったのよ、俺』と読書の楽しみを味わっているわけですが、
今日はその中のちょっとした部分を紹介します(興味を持ったら是非読んでみてね、内田先生宣伝しましたよって売れすぎてブログまで本になってるような人だから宣伝なんて不要ですね。)
『人間、イメージ出来ないものは具現化出来ない』という一節。
・・・未来像等をイメージした時、苦痛を感じる未来像になってしまうものは具現化できない、というか回避するべきという事。
例えば。
自分が政治家になったとする。
選挙カーに乗って、声張り上げて、選挙事務所でだるまに目を入れている自分がイメージできる。
でもこれは内田先生にとっては苦痛。
という訳で政治家にはならないだろう、というか、政治家になることは回避するだろう、と。
現場の空き時間でこのくだりを読んでいたら、
「まったく最近のエキストラは・・・」とボヤく声。
耳に入ってくる内容は
「エキストラが『今から現場入り。踊るOOOO線NOW』とか書いちゃってさ、エキストラがいっぱしの俳優気取りだよ、全く・・・」
ふんふん。
「大体さぁ、映画も舞台も観ない癖に俳優になりたいですって奴多すぎねぇか?」
「台本も読んだ事ないでしょ、最近の子」
「本離れしてるからな」
ふんふん。
ちょっと反論です。
今、俳優になろうとしている若き卵はやり方がまだ判らないにしても、映画は大分見ている。ただ、自分の好みのジャンルに特化しているのが特徴であって、『あれ観た?』『見た見た、面白かった』等の映画全般に関わる会話は殆ど成り立たない。レミゼのアンハサウェイが演技が凄くて彼女の映画は全て観たとか、気になるものは網羅するマニアックな魂を昨今の若手は持っているというか、これが現代の特徴らしい。(これも、内田先生の受け売りね)
だから、彼らは彼ら独自の勉強をしています。
さらに言えば、30代アッパーの舞台俳優達なんて、技術を磨く努力は半端なくし続けている。でもコネがなくて現場に殆ど介入できない。
さらに言うと、今仕事をゲットしている俳優の殆どが、技術を磨く努力よりコネをゲットする努力をし続けてきている。そして今もいかにコネクションを失わないようにするかを日々研究し続けているからこそ、あの地位を守れるのです。
俳優達はそれぞれ努力している。
ただ、売れたいのに技術ばかり磨いたり、
実力派と言われたいのに、やはりコネ育成に時間をさいたり、
まずは業界の全貌を俯瞰するべきなのに、自分の好きなジャンルだけを見たりと、
自分の努力の方向をイメージ出来てないのである。
さて、ここで内田先生の『人間、イメージ出来ないものは具現化出来ない』
の話に戻ります。
今、役者になりたいと思っている人達は本当に役者を仕事とする事を正しくイメージ出来ているんだろうか?という疑問です。
1.30代で探究心を持って技術向上を目指しながら、いい演技さえしていれば世の中認めてくれると考えている俳優の皆さん←日本の芸能界は多くの場合、人間関係で動いてるし、舞台、映画・TVはチームワークで一人相撲ではありません。そういう意味では、「チャ~」と言う芸人が言った「芸、磨くより、先輩と飲み行く時間やで」というのはある種正しいです。
2.私には特別な才能があると考えて何の努力もせずに好きなジャンルの映画だけを観ている俳優さん達←どうぞ、全体の中にいる自分をイメージできるよう、まずは俳優という仕事の全体像の把握と、その中で改めて自分はどう努力するのかを考えてみてください。世の中にはアート系の映画もあればエンターテイメント系の映画もあり、それはニーズの問題で、あなたが好きなモノがベストなものではありません。
人は自分のなりたいモノに関しては概して、プラスのイメージしか持ちませんが、どんな仕事でもプラスがあればマイナスの部分もあるわけで、ましてチームワークを要求される舞台や映画・TVの仕事においてはマイナスの要因が殆どで、自分にとってプラスの事なんて10の内に一つもあればめっけもんです。
そのマイナス部分の現実もしっかりとイメージして、しかも苦痛でなければ役者を続ければいいと思います。
『こんなはずじゃなかった』とか
『事務所が悪い』とか
『芸能界は汚い』とかボヤかずに済むように、
騙される事のないように、きちんとマイナス部分もイメージしましょう。
マイナスイメージを想像できずに「ボヤき相談」を私にしてきた場合、
『ノッケからキミの想像力が足りないの、キミがやってた事は役者になる為の努力じゃなくて、自分
のあこがれた役者ごっこをやってただけ、子供のおママゴトと一緒なの、判った?』
と、言ってあげます。
よく居る『俳優チック』な人や『女優チック』な人、少しぐらい演技に関わったぐらいで役者ごっごをしているような人は必ずボヤくようになりますから。
ちなみに私は人から『役者さんって感じですよね』って言われるとゾッとします。だからなるべく仕事以外は演技の事は話さないし、今はこんな仕事をしてるなんて人にも言いません(よっぽど作品のクオリティが良ければ別ですが)大体プロの役者ってそんなもんですよ、自慢したがり以外は。
さて、今日は大分長くなりましたので、ここらでもう一度『まとめ』です。
1、コネの為にヘコヘコ気ぃ使って飲み会行って、監督の太鼓もちつつ、監督の映画にキャストとして出演している自分を想像して、それが苦痛だったらそのやり方は回避。
2、技術を磨く為に素人がたくさんのワークショップやレッスンに参加したり、個人指導者を設けたりする自分を想像して、それが苦痛だったら実力派になるというやり方は回避。
3、自分が好きなアニメ以外のアクション、サブカル、ミュージカル、文学、古典作品を観ながら、今後の自分の演技等を研究している自分を想像して、それが苦痛だったら俳優になるという事も回避。
要するに、無理は続かないって事です。
楽にいきましょう。
諦めた頃、仕事ってきたりするもんですよ。
「俳優って、本当変な仕事」と私はイメージしています。
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