2013年3月14日木曜日

『Hey,man』~映画『アルゴ』をめぐるドラマ

アカデミー賞作品賞を受賞したアルゴ』を観ました。
素晴らしい作品でしたので皆さんも観てみて下さい。

物語の概略を少しだけ説明・・・
1979年、イラン革命真っ最中にイスラム過激派グループがテヘランのアメリカ大使館を占拠し、52人のアメリカ人を人質にとった。しかし占拠直前に6人の外交官は大使館から脱出、カナダ大使館私邸に避難。この6人の逃亡が過激派グループにばれれば、公開処刑は免れない。そこでCIAの工作員がたった一人で救出に向かった・・・というアメリカンヒーロー映画のようなフィクションようなノンフィクションを題材にしたドキュメントアクションドラマ。

完成度がとにかくものすごい。
イランの方がご覧になったら憤り甚だしい映画だとは思いますが、アクション活劇として観たら、最高のエンターテインメントです。
映画の背景に思想、観念はなく、ただ、人命救助を考えた一人の人間とそこにまつわる人々の勇気の美しさが最高の描かれ方をしています。
ドラマのある活劇!映画はこうでないと!!

話しはずれますが、、1979年、皆さんは何をしていましたか?
私は・・・ちょうどニューヨークのネイバーフッドプレイハウスに通っていた頃です。
人種のるつぼであるニューヨークのクラスは、やはり・・・人種のるつぼ。
この手の事件が起きると肩身の狭い思いをするのはアメリカ国籍以外の人種。

数日前より、学校のラウンジでは、血気盛んな若いアメリカ人達が
『イランが攻めてきたら俺は絶対に戦うぞッ!』とか
『誰にも俺の国や家族を踏みにじらせたりしない』などという
危険なナショナリズムとヒロイズムの空気が立ち込めていました。(アメリカの人達は好きなのよね、そういうの。さらに役者達だから思い込み激しくて、さらに過激・・・)

以下、ネイバーフッドでクラスが始まるのを待っている私に起った小さなドラマです・・・

クラスメイトでクリント・イーストウッド似のアメリカ人 ゛ブルース” が
その長身を折りたたみながら、私の横に座り


B『オイ、お前、人質事件しってるか?(Hey,Man, Do you know Iran hostage crisis?)』
私『知ってるよ・・・・(I know)』

  クラス中が私とブルースの会話に注目。

B『日本はよぉ、イランが俺の国に売るはずだった石油、横取りして買いやがったぜ。お前、それ知
  ってるか?』    
  
私『・・・・・・(うっ、ヤバイ)』
B『・・・パール・ハーバー(真珠湾攻撃)を忘れるな(Remember the Pearl Harbor)』
私『・・・・・・』

  このまま引き下がったら、こいつにナメられる。
  イヤ、それどころじゃない一方的にアメリカは世界の正義だという単純な論法を受け入れ、
  日本が悪者扱いされても黙ってやり過ごす事になる。
  それに大体、戦争というモノには正義も悪もないだろう・・・
  上の奴らの思惑に乗せられて泣くのはいつも民衆なんだからさぁ・・・
  などと僅か数秒間の間に色んな思考が二十そこそこの私の頭の中を駆け巡り
  私の口から思わず出てきた言葉が・・・

私『おまえらも広島の原子爆弾忘れるなよ(Remember the Atomic Bomb in Hiroshima) ・・・』
B『・・・・・・・・』

  この後の間はかなり長かったように記憶。
  突然ブルースがにやりと笑い出し・・・

B『お前も言うなぁ(Hey,Man)』

  と彼の大きな拳を私の拳に合わせて、一件落着。

以後、ブルースは若い異邦人の私の面倒をよくみてくれるかけがえのないニューヨークのビック・ブラザーになりました。
国と国との闘争心もこんな風に片付いたらイイのにと思いますが、そう簡単には行きませんね色々と利権が絡むから。大人って、本当に・・・Hey,Man

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